課題1 約8割の人がダイエットに失敗しているが、その原因と正しい対策

【1】「炭水化物抜き」は逆効果

 炭水化物(糖質)は「体脂肪になるから」と敬遠されがちですが、実は、炭水化物を抜くことは、やせにくい体を作る原因になります。

 炭水化物が足りなくなると、体内では「糖新生」という現象が起こります。これは、糖質が足りなくなるとタンパク質を分解することでエネルギーを生み出す、という体のシステムです。

 この現象が起こると、筋肉量を増やすために必要なタンパク質が使われてしまうので、筋肉量が減ってしまいます。筋肉量が減れば、基礎代謝が落ちるので、日々の消費カロリー量は減っていきます。

 つまり、炭水化物を抜いた結果、やせにくい体になってしまうのです。

【2】“ながら”ダイエットには効果のないものもある

 「掃除をしながら、テレビを観ながら、ちょっとした運動をすることで効率よくやせましょう」などの〝ながら運動のすすめ〟をよく見かけます。

 「いつも利用する駅の1つ前の駅で降りて、家または職場まで歩く」。

 これも、通勤・通学時間にできる代表的な〝ながら運動〟の1つですが、平地を歩ける体力のある人にとっては、たった1駅、ただ歩くだけでは、日常の動作の範囲なので運動にはなりません。

 1駅歩く時間があるならば、その分早く帰宅して下半身の筋トレをするほうが、よっぽどダイエット効果があります。

 唯一〝ながらやせ〟で効果的といえる方法は、「階段の上り下り」です。

 階段を上り下りするとき、私たちは一方の脚だけで体重を支えます。この動きは、下半身の筋力アップが可能で、消費カロリーは、なんとランニングとほぼ同程度です。

 駅やオフィスで、常にエレベーターやエスカレーターを使っていた人なら、今日から階段生活に切り替えるだけで、確実に体が変わります。

【3】「寝る前に食べたら太る」は勘違い

 「寝る前に食べると太るから、夕食は抜いてしまおう!」と判断してしまうと、逆に太る原因になります。

 人は空腹で寝ると、体が飢餓状態になります。すると、生命の危機を察知した脳が「何か食べて!」という信号を発信。

 寝ているつもりでも脳は覚醒し、睡眠が浅くなります。結果、睡眠不足でストレスを抱え、翌日の仕事にも悪影響を及ぼします。

 実は、睡眠不足によるストレスは、ホルモン分泌や自律神経にも影響を及ぼし、食欲を高めるホルモンの分泌を促すことがわかっています。

 「ダイエットにもなるしラッキー!」と夕食を抜いてしまうと、翌日暴食して後悔することにもなりかねません。

【4】「お腹やせ=腹筋運動」の勘違い

 「部分やせを狙うなら、やせたいところを集中的に鍛えるのが近道」と信じている方が多いのですが、実はこれも勘違い。

 お腹を凹ませたいからと腹筋運動をしたり、「くびれが欲しい!」と腰を回したり……。でも、このようなお腹周りの筋肉を使う筋トレには、お腹の脂肪をとる効果はあまり期待できません。

 人間の体は、運動をすることで全身の脂肪を少しずつ分解し、血液中に流します。これが動かしている筋肉に運ばれ、エネルギーに変わることで、筋肉を動かす燃料になります。

 脂肪を溶かして作ったエネルギーは、筋肉という「エンジン」を動かす「ガソリン」です。当然、エンジンが大きければ大きいほど消費するエネルギーも増えます。

 人間の体には、動かしている部分の脂肪を、優先的に燃やすしくみはありません。とにかく大きな筋肉(エンジン)を動かして、どんどんエネルギー(ガソリン)を使ってしまう。これが体脂肪を落とす一番の近道です。

 お腹の筋肉は、意外に小さく薄いため、期待するほど多くのエネルギーを消費できません。やせたい、引き締めたいのがどの部位であろうと、鍛えるべきは下半身。

 下半身には全身の筋肉の約7割が集中しています。効率よく体脂肪を落としたいなら、スクワットがおすすめです。

【5】「脂肪を燃やすには20分以上の有酸素運動」はもう古い

 「体脂肪は20分以上、有酸素運動を続けないと燃えない」という説を聞いたことはないでしょうか?

 以前は、運動を始めるとまず体内の「糖」が主なエネルギー源として使われ、20分後を境に「体脂肪」に変わる、と考えられていました。しかし今では、「体脂肪は運動のスタート時から燃焼している」というのが常識です。

 私たちは起き上がった瞬間から体を動かしています。つまり、起床時から「糖」がエネルギー源として使われているため、20分たたずとも体脂肪は燃える、と考えられるようになったのです。

 また、近年の研究により、20分間の連続した運動と10分間の運動2回とで比較すると、体脂肪の燃焼効果にはほとんど差がないこともわかりました。

 連続して運動しても、複数回に分けても、同等のカロリーを消費できるならば、わざわざまとまった時間を捻出する必要はありません。

 長い時間続けて運動するのが苦手な人や、忙しいビジネスパーソンでも、隙間時間を活用してダイエットができるのです。

参照 中野ジェームズ修一氏

© 2022 SANTIERU inc.

PAGE TOP